人生折り返し地点からのデザインワーク

技と知恵と工夫を未来に

伝統技術の特許申請について

心底びっくりする事件がありました。

 

製品〇〇は、わが社のもつ特許を侵害しています。製造販売を即刻中止しなさい。という警告が、私の業界に出回りました。業界と言っても、数軒だけのちいさな同様のはなしで、組合などがあったりするわけではありません。関わるひとたちは20人にも持たないとは思いますが、みな騒然としました。普段見慣れない弁護士からの内容証明ですから、とくにこころがざわざわました。

 

その技術は、鋳物の知恵と技のひとつで、江戸中期から連綿と伝わっているものです。錫という素材を板状に鋳造する技、またはその板の肌合いを作る技で、私の工房でも、商品種だけでも100以上に用いられています。先達からおそわり、いまも日常的に(とくに気にもせず)つかっている技術でした。他の工場も、私の教え子も、普通に毎日つかっているものです。とくに板の仕事を得意としている私の工房には重要な技術です。

 

調べたところ、たしかに東京の合金メーカーが特許出願・登録していました。なので、言い分はその先方にあります。特許は基本的に、早い者勝ちです。ひとまず私の方では、当方の顧問弁護士、弁理士に相談することなりました。

 

若い世代の作家などは憤慨して、自分で調べ動き回って解決策を練っているようです。同業の間でも、議論が繰り返されました。ただ、結論から言うと埒があきませんでした。特許の無効にむけて反証するにも、その資料集めの手間と時間、お金が膨大にかかるものです。無効の申請自体が利益を生むことが無いとの理由で、そのまま波風が立たないようにするしかないようです。

 

警告はもちろん無視しますが、こういう事例、どうにかならないものでしょうかね。そもそも特許って、知恵と工夫を保護するものなのにね。